左沢
短いトンネルを二つばかり抜けると、大江町に入る。最上川が間近にせまり、集落がたてこんだところで、終点、左沢駅。「あてらざわ」。難読駅名。線路がここで途絶える。
私はクルマで来たが、本当に最上川の眺めがいい。すぐ近くだ。
ここは古くから舟運で栄えた町だそうで、近くの楯山公園には最上川舟唄発祥記念碑がたつとか。船頭さんの舟唄、ここで生まれたのか。
一軒宿の左沢温泉。朝日連峰の登山基地となる。険しい山々に分け入る冒険者は、ここで一泊、英気を養う。伝統の花火大会の花火も、彼らの目には入らないであろう。外部の者を寄せ付けない、自然の壁。
たちはだかるものと、挑戦するもの。舟唄の響く、ゆったりとした川の流れと、強きものに歯向かう激流の鼓動。私はもうつきあわない。ここからは己の力のみで進まれよ。
じっと見つめる左沢駅。終着駅。線路の途切れた先に、一歩、足を踏み入れる勇者。私はここまで。凡人はただ引き返すのみ。
そんな私をあざけっているのか、悲しんでいるのか、知らない。後ろは振り返らない。
(01年)
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